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ローズウォーターの香りDNA:遺伝子から芳香分子まで

ローズウォーターの香りDNA:遺伝子から芳香分子まで

1. はじめに

香りは単なる感覚的な印象ではなく、その背後には高度な分子構造と生物学的メカニズムが存在します。バラの花びらを水蒸気蒸留して得られるローズウォーターは、遺伝的経路、植物生化学、環境要因がどのように独自の芳香プロファイルを形成するかを示す代表的な例です。本記事では、バラの香り生成を司る遺伝的要因、揮発性分子を生み出す生化学経路、そして蒸留が最終的な香りに与える影響について解説します。


2. 「香りのDNA」とは?

「香りのDNA」とは、植物がどの揮発性有機化合物(VOC)を合成するかを決定する遺伝コードを指します。バラでは、特定の遺伝子がモノテルペン類、芳香族アルコール、エステル類の生成を制御し、特有のフローラルノートを生み出します。

バラの芳香に関わる主要遺伝子:

  • RhNUDX1ゲラニオールなど、ローズウォーターの主要成分となるモノテルペン類の生成に必須。

  • RhPAAS代表的なバラの香り成分である2-フェニルエタノールの前駆体を生成。

  • RhAAT柔らかくフルーティーなニュアンスを生み出すエステル類を生成。


3. 香り形成の生化学

バラの花弁の香りは、以下の3つの主要な生化学的経路によって形成されます。

A. MEP経路ゲラニオール、シトロネロール、ネロールなど、ローズウォーターを代表するモノテルペンを生成。

B. シキミ酸経路甘く華やかな香りを持つ2-フェニルエタノールやフェニルアセトアルデヒドを生成。

C. エステル/ラクトン経路香りに丸みや柔らかさを与える芳香分子を形成。


ローズウォーターの香りDNA:遺伝子から芳香分子まで

4. ローズウォーターに含まれる主な芳香成分

化合物

香りの特徴

ゲラニオール

甘い、フローラル、中心的

シトロネロール

フレッシュ、グリーン、涼感

ネロール

柔らかなフローラル

2-フェニルエタノール

クラシックなバラ香

リナロール

フローラル+シトラス

オイゲノール

ほのかなスパイシー

これらの化合物は遺伝的経路と蒸留挙動の両方を反映しています。


5. 蒸留の役割

水蒸気蒸留は、極性・揮発性・分子量に基づいて分子を選択的に抽出します。

ローズウォーターがローズ精油と異なる理由

  • アルコール系化合物はより効率よく蒸留される

  • 重いセスキテルペン類は植物組織に残留する

  • 蒸留は軽く酸素を含む芳香分子を優先的に抽出

その結果、ローズウォーター特有の 軽やかで清潔感のあるフローラルノート が形成されます。


6. ローズウォーターの香りに影響する要因

A. 遺伝子品種によって香り生成に関わる遺伝子の発現強度が異なる。

B. 環境気温、日照、湿度などが揮発性成分の形成に大きく影響。

C. 蒸留方法花弁の品質、水の比率、蒸留温度、装置の構造が最終的な香りを左右する。


7. 結論

ローズウォーターの香りは伝統的な製法の産物だけではなく、植物のDNAに組み込まれた高度な生物学的システムの直接的な成果です。RhNUDX1、RhPAAS、RhAAT といった遺伝子がモノテルペンや芳香族アルコールの生成を司り、そのフローラルアイデンティティを形成します。MEP経路やシキミ酸経路などの生化学的経路は、最終的に香りの署名となる分子を生み出します。さらに、環境条件や蒸留技術がこの天然の“香り設計図”を精密に仕上げ、ローズウォーター特有の瑞々しさ、柔らかさ、芳香の複雑さを与えます。

香りの“DNA”を理解することは、科学的な知見を深めるだけでなく、香水、アロマテラピー、化粧品産業における栽培・抽出・製品開発の向上にも寄与します。


本記事は Galbanum Oil Fragrance により調査・執筆されました。

引用元を明記することでご利用いただけます。


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